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日本調理科学会誌Vol.29 No.3(1996)より抜粋

冷凍保存肉の食味に及ぼす脱水シートの影響

保井明子(仙台白百合短期大学) 高島薫子(昭和電工) 藤本健四郎(東北大学農学部)

1. 緒言

 近年,家庭における食品のまとめ買いが進み,それに伴って家庭用冷蔵庫も大型のものが普及し、冷凍保存Lた食品が広く用いられるようになってきた。
 しかし,家庭用の冷凍庫での凍結保存は,商業用冷凍庫に比べて凍結が緩慢であり,最大氷結品生成帯を通過する時間が長いため,氷晶による組織破壊が進みやすい1)。そのため解凍時にドリップが発生し,組織中に脂質酸化促進物質が存在する場合には,著しく脂質酸化が進行し,異臭が発生するなど,凍結前に比べて風味は低下しやすい2)。
 現在,食品の冷凍保存袋として厚手のチャック付きポリエチレン製の袋が市販されているが,これは保存中の乾燥や臭いの拡散防止には有効であるが,氷晶による組織破壊を防ぐことはできない。

 本研究では,半透膜を介し浸透圧を利用して食品から水分を除去する食品用脱水シートで食品を包み,凍結するまでの間に食品の表層から軽度に脱水することにより,解凍後の風味変化がどの程度抑えられるかを,市販の冷凍保存袋と比較検討した。

「2.材料および実験方法」・・・(省略)

2.実験結果および考察

(1)脱水シートによる脱水効果
Talbe2(省略)に示した通り,脱水シート区ではいずれの食品でも冷凍保存中に5%前後の重量減が認められ,脱水が進行した。一方,対照区での減少は極めてわずかであった。解凍後は両区とも1〜2%の重量が減少したが,流出した水が対照区ではドリップを形成したのに対し,脱水シート区では大部分シートに吸着され,ドリップ量はわずかであった。

(2)官能検査
官能検査の結果をTable3,4(省略)に示した。
牛スライス水煮において“味”,合挽き肉ハンバーグにおいて“味”と“水っぽさ”でそれぞれ脱水シート区が有意に好まれた。しかし,豚スライスのソテーでは,各項目とも効果が認められなかった。
また豚レバーソテーにお いては,血抜きの有無に関わらず脱水シート区が“味 ”と“総合”において有意に優れていた。“生臭さ”において脱水シートを用いた方がよい傾向が認められたが有意差には至らなかった。

(3)ドリップ中の総アミノ酸の測定
豚レバー解凍時に生ずるドリップ量は脱水シート区においては生レバー重量の1.09%,対照区においては2.20%であり,脱水シート区のほぼ2倍のドリップが生じていた。
レバーからのドリップ中の遊離アミノ酸量は,Table5(省略)に示した通り,脱水シートを使用すると約2/3に減少した。

Fig.2に示した通り脱水シートに使用しているポリビニールアルコール膜に対する遊離アミノ酸などのエキス成分の水に対する相対的な透過能は極めて低い。
従ってこれら食品の呈味に関連の深いアミノ酸類はほとんど脱水シートには吸着されず,ドリップの中に残存することになる。
それにもかかわらず今回の実験では脱水シート区の方がドリッブ中の遊離アミノ酸が対照区よりも少なかったので,脱水シートにより食品からの呈味成分の流出が効率よく抑えられていることがわかる。
一方この膜のアンモニウムイオンの透過率は高いので生臭いにおいなどの悪臭成分の除去効果が期待できるが今回の試験では“生臭み”には有意差が認められなかった。

しかし,2点比較では,各食品とも脱水シートを使用した方が好まれる傾向があり,マイワシ2)のように有意差が認められなかったのは,畜肉食品では酸化しやすい多価不飽和脂肪酸量が少ないためと考えられる。このように畜肉食品の官能検査において“水っぽさ”と共に“味”あるいは“総合”で有意差が認められたのは,主として脱水シートを利用した場合,解凍時のドリップ量が少なく,さらに旨味成分がシート中へ透過しにくいという特徴によるものと考えられた。

今回の結果により,脱水シートを利用することで冷凍保存食品からのドリップの発生が抑制され,又,軽度に脱水することにより,旨味成分が渡縮されたことが官能検査での優位の原因と示唆された。

Fig2.脱水シートに便用したポリビニールアルコール膜に対するエキス成分の透過性

エキス成分の浸透圧グラフ
*エキス成分の水に村する相対的な透過性の比率
○グルタミン酸 □グルタミン酸ナトリウム △グリシン  ◎リジン
●イノシン ■イノシン酸ナトリウム  ▲アデノシン三リン酸ナトリウム
◎グアニル酸ナトリウム

3.要約

 蓄肉食品を冷凍保存する際,脱水シートで包装した場合の効果を検討した。その結果,脱水シートで包装し保存した食品からはドリップの流出が少なく,それに伴って旨味成分の流出が抑制された。また官能検査においても脱水シート使用区の食品を好む傾向が見られ,食品を保存する際の脱水シートの有効性が示唆された。
終わりに本研究にご協力いただいた仙台白百合短期大学家政科の教職員ならびに学生の皆様に深く感謝いたします。

文献

  1. 須山三千三,鴻巣章三:水産食品学,P204〜218,(1987)恒星社厚生閣
  2. 瀬戸美江,藤本健四郎:調理科学,27,2(1994)
  3. Johns,A.M”Birkenshaw,L.H.and Ledward,D.A.Meat Sci.,25,1344(1989)
  4. 太田静行:魚臭・畜肉臭-においの化学とマスキング(太田静行編),東京,P1(1981)恒星社厚生閣
  5. 宅野雅巳,太田静行:油化学,39,409(1990)
  6. Spackman,D.H”Stein,W.H.and Moore,S.Anal.Chem.,30,1190(1958)
    (平成7年9月18日受理)

 


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